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最近、知財が注目されていますが、なぜでしょうか?
企業の資産における無形資産の割合は、7割以上と言われています。土地、設備のような有形資産は、現在では競争力の源泉とは成りえず、差別化の要因は知財などの無形資産と言って過言ではないでしょう。知財には、明文化されていないノウハウや商標なども含まれますが、技術に最も直結した特許がその中心でしょう。特許がもつ権利保護としての観点も重要ですが、技術データベースの公開情報源としての観点がより注目されています。
現在、日本国内では毎年約40万件出願され、権利が保護されている特許は約190万件に達します。権利を失った特許や出願中のものも含めれば全部で約850万件が電子化されており、膨大な公開データベースとなっています。今日において、自社の技術力分析のみならず、競合他社との比較分析に、特許は欠かせない情報源となっています。
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なぜパテントスコアのような自動的特許評価が必要なのですか?人による評価では不十分ですか?
例えば、国内大手メーカーの場合、保有する特許は数万件に達し、競合10社との比較分析となると十数万件にもなります。技術を熟知した人間による評価が最も正確ですが、人手では時間的に非現実的です。また分担して行う際に、各人が同一の基準で評価するのは難しいでしょう。
このように、膨大な特許データの評価には、同一基準での自動的な評価である統計処理判断が望まれます。重要な特許群を統計的にスクリーニングし、抽出されたものについてのみ人間による評価を行えば、遥かに効率的となります。このような統計処理手法の1つとして、パテントスコアがあります。
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パテントスコアはどのようにして特許を評価しているのでしょうか?
公知情報を利用した、特許に対する注目度を測っています。具体的には、特許の審査経過情報(以降、経過情報と略す)を中心に利用しています。経過情報とは、特許が出願されてから審査、登録、その後の審判などの履歴記録情報です(※図表1)。
この経過情報から
- 出願人が権利化に如何に注力したか(優先権、早期審査)
- 審査官の判定結果(審査、登録)や、その特許の存在が後続特許の審査にどの程度影響を与えたか(拒絶理由通知被引用)
- 競合他社が、その特許審査にどの程度干渉したか(包袋閲覧、情報提供)、さらには競合企業が、事業障害となった特許を取り除くため、審査結果の無効を求めたか(異議申立、無効審判)
が分かります。つまり、その特許に対する出願人、審査官、競合他社の3者の観点から注目度を測ることが可能です。
図表2は、注目度の高い特許にはどのような経過情報が付与される傾向にあるかを示していす。これには、日本国内で1996年に登録された約10万件の特許について、登録後10年間の維持率の推移が、各経過情報別に集計してあります。
黒の太線が全登録特許平均の維持率で、10年後には約50%が維持され、残りは放棄されているのが分かります。一方、無効審判に勝った特許や早期審査された特許は、10年後でも約80%が維持されています。一般に重要な特許は維持年金を支払って権利が維持され、そうでない特許は放棄されるため、維持率の高い経過情報が付与された特許に重要なものが多く存在することが推測されます。これらのことから、維持率を基準にして注目度のウェイトを決定しています。
パテントスコアでは、各特許に付与された複数の経過情報に対し、ウェイト付けをして注目度を合計した後に偏差値化し、相対値として評価しています。相対評価は、同一技術分野でかつ同一出願年の特許群内で行います。一般に技術分野により特許取得の活発度、即ち経過情報の付与頻度は異なりますが、技術別の特許取得難易度などを、技術分野別相対評価で修正します。また同一出願年の特許内での相対評価により、異なる特許審査制下での特許を区別した評価、さらには、古い特許ほど必然的に経過情報が付与される傾向を補正します。
経過情報のほかにも、特許評価をより詳細に行うために、特許文書中の情報、いわゆる書誌情報の分析も取り入れています。例えば、特許文書内の内容が複数の発明で構成されている場合、その構成単位である、請求項数を評価に利用しています。
以上は、国内特許についての説明でしたが、米国や欧州の特許においても、経過情報や書誌情報が、国内特許と同等の挙動を示すことが分かりました。そこで同等のアルゴリズムを利用して米国特許版、欧州特許版のパテントスコアも開発されており、日本特許版と同様に活用されています。またパテントスコアのアイデア自体も既に特許として保護されています。
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パテントスコアは、人間の評価とどの程度一致するのでしょうか?
このように経過情報による注目度を統計処理したパテントスコアと、人間による評価が、どの程度一致するのかについて、検証例を示します。図表3は、大手電機メーカーによる人的評価値とパテントスコアの比較図です。人的評価によるA、B、C3段階の特許群別に、各群に含まれる特許のパテントスコアの分布が描かれています。優れている社内A評価の特許群に対し、平均パテントスコアは約68、中間のB評価は約61、優れていないC評価の特許については約50となりました。それぞれの平均値は、ほぼスコア差が10の等間隔に分かれています。特に優れていないC評価特許群分布は、他特許群分布との重なりが小さく、かなり明確に分離されました。
また、パテントスコアの昇順に応じて3段階評価した場合、社内3段階評価と約7割一致しました。このように、パテントスコアによる自動的な評価でも、人による評価をほぼ再現することが分かります。他の企業データを利用した検証でもパテントスコアの有用性が複数件、確認されています。
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パテントスコアはどのように利用されていますか?
パテントスコアは、注目する特許の評価値を得るためだけではなく、特許群のパテントスコア値合計を算出することで、自社・他社の競争力を客観的に比較したり、注目度の高い発明者の特定、成長過程/衰退傾向にある企業・分野の把握など、競合分析に応用することができます。自社特許の分析においては、特許のスクリーニングに適用され、維持年金支払いの節約、いわゆる特許の棚卸しに利用されています。
また、企業の財務データや倒産確率とパテントスコアの相関に関する研究成果が経済産業省から公開されています。
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